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健康と予防

更新日:2024.03.11

聴力は悪くないのに言葉が聞き取りにくいのはなぜ?

聴力は悪くないのに言葉が聞き取りにくいのはなぜ?

雑音のある場所だと会話が聞き取れない。相手の言っていることが伝わらず、聞き返すことが多くなった。
このような悩みが出た時、考えられる原因は何でしょうか。

今回はそのような読者に向けて、話が聞き取れない原因や対策について説明していきます。聴覚情報処理障害=APDや難聴についても詳しく触れていきます。

人の声が聞き取りにくい・聞き取れない時に考えるべき事

聴覚情報処理障害(APD)の可能性

人の話が聞き取れないと感じたとき、まず考えるべきことは「聴覚情報処理障害=APD」の可能性です。
APDとは、聴力は正常に働いていても、人混みや雑音が入り混じっているところでは、必要な声や音を認知できないといったものです。

また、耳鼻咽喉科でしっかりとした診察を受けても、「異常なし」と判断されることがあることも特徴の1つです。
これは、海外ではAPDの症例が多いのに対し、日本では症例件数が少ないため認知が進んでおらず、十分な理解のない医者が多いことが原因と言われています。

・聞き返すことがよくある
・聞き間違いが多い
・騒がしい場所ではあまり聞き取れない
・話を聞きながらメモをとるのが苦手
・複数人と話すのが困難

上記の5つの項目は、APDである可能性を自分で調べることができるチェックリストの一部です。
当てはまるものがある人は、自分がAPDかもしれないということを念頭に置いておきましょう。

難聴の可能性

もう1つの可能性として考えられるのが「難聴」です。
難聴は大きく分けて3つに分類することができますが、その前に耳のしくみを簡単に説明します。

耳は、外から音を集めて鼓膜まで伝える外耳、外耳で集めた音を増幅する中耳、音の振動を電気信号に変換して脳に伝える内耳の3つから成り立っています。
詳しくは下の画像をご覧ください。

①伝音難聴

外耳や中耳の障害によって起きる難聴です。
高度の難聴になりづらく、補聴器をつけることで聞こえが改善しやすい難聴です。
中耳炎や鼓膜穿孔が原因となることがあります。

②感音難聴

内耳や神経、脳の障害によって起きる難聴です。
具体的には、突然生じる突発性難聴などや、慢性的に生じる騒音性難聴・加齢性難聴、生まれつきの先天性難聴など、発症時期や進行状況によっても様々な種類があります。

また、最初に述べた加齢性難聴は、現在では劇的な治療方法は存在しませんが、補聴器を正しく使って聞こえを補うことで、認知症を予防したり生活の質を上げることができます。

③混合性難聴

伝音難聴と感音難聴の両方が起きている難聴です。
どちらの難聴の度合いが強いかによって治療法が異なります。

関連記事:耳が聞こえづらい?!原因や対処法を知って早めに対応を
関連記事:難聴はどんな人がなるの?症状や予防策は?

人の声が聞き取りにくい・聞き取れない時の対策

聴覚情報処理障害(APD)の場合

APDである場合、ちょっとした工夫を施すことで生活が楽になります。
以下がその例です。


・一対一で会話する機会を作る
・静かな場所を選んで会話をする
・相手の口を見ながら、話している内容を察知するようにする
・ノイズキャンセリング機能のあるイヤホンを使う
・講義ではなく、本などのテキスト中心の教材を使って勉強する
・人と話すときは、テレビ、ラジオ、音楽など雑音となるものを予め消しておく
・話し相手の方に、大きな声でゆっくりと話してもらうようにお願いする

また、耳鼻咽喉医の平野先生が書いている本には、APDで人の話が聞き取れないときの対策についてわかりやすく書かれています。
ぜひ参考にしてみてください。

*平野浩二(2019)「聞こえているのに聞き取れないAPD【聴覚情報処理障害】がラクになる本」

難聴の場合

「友人や職場での会話で聞き返すことが多くなった」「テレビの音量が以前より大きくないと聞こえない」など症状が出た場合は、後回しにせず早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。

理由はいくつかありますが、ひとつは難聴の種類によっては早期に治療を行うことが求められるからです。
とくに突発性難聴は、早期発見・早期治療が求められます。
なぜならば、発症してから約1ヶ月程度で聴力が固定してしまうからです。

突発性難聴であれば、発症後1週間以内に適切な治療を受ければ約40%の人が完治し、50%の人には何かしらの改善が見られます。
発症後1週間以内に病院へ行き、適切な治療を受けることが大切です。

また、難聴は40代~60代に多いと言われていますが、10~20代の若者や働き盛りの年代にも発症することがあります。
若いからといって過信せず、症状が現れたらすぐに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

関連記事:ストレスと突発性難聴は関係ある?仕事への影響についても解説
関連記事:突発性難聴の耳鳴りの特徴は?原因・治療方法を解説

結論:聴力は悪くないのに言葉が聞き取りにくい時は病院へ

人の話が聞き取れない原因として、APDと難聴の2つの可能性をご紹介し、それぞれの対策方法を講じてきました。
もちろん、何が原因かによって対策は変わってきますが、共通して大事なことは、「違和感を感じたらすぐに耳鼻咽喉科へ行くこと」です。

また、病院へ行っても「聴力に異常なし」と診断されてしまうかもしれませんが、その時はご自身で「APDの可能性はないでしょうか?」と聞いてみるのもいいかもしれません。

先ほども軽く触れましたが、日本ではAPDに対する認知や理解、支援体制が整っていません。
病院の医師であっても適切な診断が下せるとは限らないため、診察を受けている私たちからもAPDの可能性がないのか質問することが大切です。

改めての結論になりますが、APDであっても難聴であっても、自分で症状を認知することはとても難しいです。
「自分はまだ大丈夫だろう」とは決して思わないようにしてください。

NHKの「“聞こえているのに 聞き取れない” APD当事者の悩み」という記事では、自分がAPDや難聴だとは気づかず、仕事を失って初めて自分にその可能性があると気づいた方もいらっしゃいました。
耳に少しでも違和感を感じたら、すぐに病院へ行くようにしましょう。

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言語聴覚士

ゴン・ハンオル

Han Eol Kong

韓国江原道春川出身。幼い頃から祖母と一緒に暮らしていた影響で高齢者関連の学問に興味を持ち、韓林大学聴覚学科に進学。大学時代に耳鳴り治療を開発する企業でインターンシップを経験し、聴覚士資格を取得。その後は補聴器専門センターでセンター長として勤務。現在はオリーブユニオンで顧客へのカウンセリングや製品開発を行うなど幅広く活躍中。

ゴン・ハンオル

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