このみみとみらいへ

ミミマガジン

このみみとみらいへ

ミミマガジン

2026.08.28

なぜ「音を聞くだけ」ではダメなのか?東北大学が解き明かした「耳脳トレーニング」の科学

「会話が聞き取りにくい…」と感じたとき、実は「耳」だけでなく「脳の聴く力」も衰えているかもしれません。

これまで「聞こえにくさ」を感じたとき、多くの人は「音を大きく増幅させること(集音)」だけを対策として考えてきました。しかし最新の脳科学では、「聞こえの良さは、耳の聴力だけでなく、脳の認知機能との総合力で決まる」ということがわかっています。

そこで誕生したのが、東北大学加齢医学研究所の研究成果をもとに開発されたスマートフォン用アプリ「耳脳トレーニング」です。当社開発の集音器にも搭載されているこのトレーニングの仕組みと、科学的根拠について解説します。

1. 耳脳トレーニングとは?(基本の定義)

耳脳トレーニングとは、会話音(音声)を聴き取る課題とゲーム形式の認知課題を組み合わせ、「耳(聴覚)」と「脳(認知機能)」を同時に刺激して音を聞き分ける力を向上させるトレーニングです。

人間が会話を理解するプロセスは、大きく2つのステップに分かれます。

  • 【耳の役割(聴力)】 音の振動を捉え、電気信号として脳に伝達する。
  • 【脳の役割(認知機能)】 届いた信号を分析し、選択的注意や作業記憶(ワーキングメモリ)を用いて言葉の意味を識別・理解する。

従来の対策(一般的な補聴器や集音器)は主に「耳の音量」を補助するアプローチでした。これに対し耳脳トレーニングは、「脳の処理能力」と「耳の聴覚感度」を同時にトレーニングすることで、根本的な「聞こえの総合力」の改善を目指します。

2. なぜ「耳」だけでなく「脳」を鍛える必要があるのか?

「音は聞こえているのに何を言っているか理解できない」「ガヤガヤした場所だと会話が聞き取りにくい」というお悩みは、耳の感度低下だけでなく、脳の音処理機能や認知機能の低下が深く関係しています。
加齢などに伴い、脳の以下の能力が低下することで会話の聞き取りが困難になります。

  • 選択的注意(カクテルパーティー効果): 雑音の中から必要な声だけを選び出して聴く力。
  • 作業記憶(ワーキングメモリ): 聞いた言葉を脳内に保持しながら、文脈を理解・判断する力。
  • 処理速度: 早口や複雑な会話を瞬時に読み解くスピード。

単に聴覚刺激を聞くだけの単調な訓練では継続が難しく、効果も限定的でした。そのため、「音量をコントロールした聴力訓練」と「ゲーム要素を取り入れた脳トレ(認知訓練)」を同時に実施することが、脳の可塑性(変化する能力)を引き出すために不可欠とされています。

3. 科学的根拠(東北大学の研究成果・エビデンス)

東北大学加齢医学研究所の研究グループが実施したランダム化比較試験(RCT)において、耳脳トレーニング(聴覚・認知複合介入)の科学的効果が実証されています。

  • 聴力(純音聴力:一般的な健診で行う「ピッピー」という音の聞こえ)の改善: 音量を徐々に下げる負荷をかけたトレーニングにより、より小さな音が聞こえるようになる聴力閾値の改善が確認されました。
  • 認知機能(作業記憶・注意・論理的記憶)の向上: ワーキングメモリ(保持できる情報桁数)の向上や、注意力・論理的記憶力などの改善が見られました。
  • 脳構造・ネットワークの変化(脳の可塑性): 4週間の介入実験において、MRI画像解析により右背外側前頭前野(思考や記憶を司る領域)や側頭極(言語や記憶の意味を理解する領域)などの脳領域における灰白質体積(神経細胞が集まる脳の主要部分の容積)の変化や、言語処理に関わる脳領域間の機能的結合(脳の各領域どうしの連携の強さ)の強化が実証されました。
  • 高い継続性: ゲーム形式を採用したことで、高齢の参加者でも辞退者がほぼ出ず(50名中1名のみ辞退)、楽しく継続できることが実証されています。

【特許情報】 本技術は、国立大学法人東北大学により「聴覚機能訓練装置、聴覚機能訓練方法、及び、聴覚機能訓練プログラム」(特願2021-000169 / 特許第7584788号)として出願・取得された技術に基づいています。

4. 1日5分!アプリで手軽に取り組める「3つのプログラム」

「耳脳トレーニング」は、すべてのOlive製品をお使いの方であれば、専用スマートフォンアプリから完全無料で利用できます。1日わずか5分程度、ゲーム感覚で楽しく取り組める3つのメニューで構成されています。

  • ① エピソード記憶トレーニング【記憶力を鍛える】: 言語を耳で正しく認識し、決められた順番通りに記憶して回答するトレーニングです。
  • ② 作業記憶トレーニング【ワーキングメモリを鍛える】: スムーズな会話に必要な「作業記憶」にアプローチし、会話の文脈を脳内で保持する力を高めます。
  • ③ 注意トレーニング【注意力・抑止力を鍛える】: 心理学の「Go/No-Go課題」をアレンジし、流れる音や指示を正しく認識して適切な反応を行う集中力を研ぎ澄まします。

5 . 耳脳トレーニング搭載の集音器と一般的な補聴器・集音器との違い

※一般的な補聴器や集音器を否定するものではありません。補聴器で入ってくる音を正しく脳で処理するための「併用トレーニング」としても効果が期待されています。

6. よくある質問(FAQ)

Q1. 年齢に関係なく効果は期待できますか?
A. 期待できます。東北大学の研究(対象:60歳以上の健常高齢者)において、4週間のトレーニングで聴力・認知機能の向上および脳の可塑性(脳の構造的変化)が明確に観察されています。年齢に関係なく脳と聴覚系は変化・適応する能力を持っています。

Q2. すでに持っている補聴器と併用することはできますか?
A. 可能です。補聴器は音を大きくして耳に届ける機器ですが、届いた音を脳で正しく言葉として理解するには認知機能が必要です。補聴器を使いながら耳脳トレーニングを行うことで、音に早く順応し、会話の聞き取りやすさをさらに高めることが期待されます。

Q3. 医学的な治療の代わりになりますか?
A. いいえ。急な聞こえにくさ、耳鳴り、痛みなどの症状がある場合は、自己判断せずまず耳鼻咽喉科等の専門医にご相談ください。本トレーニングは日常的な聞こえと脳の健康維持・パフォーマンス向上を目的としたものであり、医療行為を代替するものではありません。

Q4. 耳脳トレーニングがどのようなものか、見ることはできますか。
A. はい、以下の2つの動画で、耳脳トレーニングの解説と実際のゲームの様子を追体験できるようになっていますので、ぜひご覧ください。

【聞こえを鍛える】耳脳トレーニングのご紹介

【耳と脳にアプローチする】耳脳トレーニング体験ム

まとめ:今日から始める「耳と脳」の健康習慣

「聞こえ」の違和感は、耳の機能だけでなく脳の処理機能とも深く関わっています。

Oliveの集音器をお使いの方は、専用アプリから今すぐ「耳脳トレーニング」を無料でお試しいただけます。1日5分からの新習慣で、毎日の会話をもっとクリアに楽しんでみませんか?

健康と予防カテゴリの人気記事 Ranking in category