このみみとみらいへ

ミミマガジン

このみみとみらいへ

ミミマガジン

ひととひと

更新日:2023.11.16

【Oliveな人たち】世界で累計80,000台突破!「不可能」といわれた“会話サポートイヤホン”開発秘話

【Oliveな人たち】世界で累計80,000台突破!「不可能」といわれた“会話サポートイヤホン”開発秘話

【Oliveな人たち】では株式会社 Olive Union (オリーブユニオン) で働く社員について、仕事内容ややりがい、製品開発のエピソード、会社の歴史についてインタビューしていきます。
この記事を通して社員の人柄や情熱をお届けすることで、オリーブユニオンを身近に感じていただけたら嬉しいです。

今回は代表取締役であるソン・ミョンクン氏(オーウェン)に、会話サポートイヤホンOlive Smart Ear(オリーブスマートイヤー)の開発から販売にいたるまでの秘話を聞いてきました。

ぜひ最後までお楽しみください。

今回インタビューに答えてくれたのは…

代表取締役 ソン・ミョンクン(オーウェン)氏

【プロフィール】
1987年 韓国・ソウル生まれ。
SAMSUNG ART & DESIGN INSTITUTEにプロダクトデザイン専攻で入学。
韓国電機・通信大手、サムスンでプロダクトデザイナーとして働く。
その後コロンビア大学院 建築学専攻に進学するものの、叔父の難聴をきっかけに革新的なヒアラブルデバイスの開発を開始し、Olive Union Inc. 創業。

Olive Union 会社概要

現在世界で約4.6億人で、2030年にはその倍の9億人を超えるともいわれる難聴者の「聞こえ」に関する社会的課題に対し、革新的なヒアラブルデバイスの開発・販売を行っている。

アメリカのクラウドファウンディングサービスINDIEGOGOにて1億円超の資金調達に成功。韓国・アメリカでFDA認定(医療機器認定)を取得。
CES2020、2021(世界家電見本市)にてイノベーションアワード受賞。
2019年本社を日本に移転し、現在日韓米で事業展開を行う。
累計12億円を超える資金を調達済み。

物づくりを目指した幼少期と大学生時代

CEOである現在も最前線で商品の開発に携わっているようですが、物づくりにはいつから興味を持ち始めましたか?

私は小さい頃から未来を描いた日本のメカ系アニメが好きで(笑)、小学生のときはアニメから着想を得ては放課後、発明クラブの活動に熱中していました。

そこから物づくりの道へいくことを決めたのは、サムスン直下のSAMUSNG ART & DESIGN INSTITUTE(サムスン アート&デザイン インスティテュート )でプロダクトデザインを学んでいた大学2年生のときです。

どのようなことがきっかけでサムスンで働くことになったのでしょうか?

私が手掛けた、”日常生活での鍵の締め忘れを防止する”プロダクトが、世界三大デザインアワードのひとつ『Red Dot Design Award』で『Best of Best』という賞を受賞したんです。
同じタイミングで、「サムスンでプロダクトデザイナーとして働いてみないか」と声をかけられ、大学に通いながら社員と同じチームで働き始めました。

授業と仕事の両立は想像以上にハードで、栄養失調で入院するほどでした(苦笑)。
それでも自分が選んだ道でNo.1になりたいとその時は必死に頑張っていましたね。
ただ、その日々があったからこそ『頑張ればちゃんと結果がついてくる』ということが確信に変わり、今の自信につながっています。

世界三大アワード「Red Dot Design Award」で「Best of Best」を受賞したミョンクン氏の「鍵」のプロダクト

「聞こえ」の問題に取り組むと決めた叔父の存在

サムスンを経て、その後は名門コロンビア大学院の建築学科に進学されたようですね

はい、そうです。
2年間のサムスンでの仕事を経て大学を卒業した後、アメリカ・コロンビア大学院の建築科に進学しましたが、期待とは裏腹にフラストレーションがたまるような日々が待ってました。

学んでいたことが未来の都市計画やNYの交通渋滞を緩和する方法などで、サムスンで実際のプロダクト作りに携わっていた私にとって、どれもリアリティのある問題には感じられなかったんです。
周りの友人たちに「なぜこれをやるべきなのか?」と聞いても、皆「課題だから」という答えばかりで、研究に没頭できず、学んでいることに意味を見出せなかったんです。

聞こえの問題に注力しようと思ったのはなにか理由があったのでしょうか?

アメリカに住む叔父の補聴器に違和感を感じたのがきっかけでした。
当時、家族と離れて暮らしていた私を気にかけてくれていたのがアメリカに住んでいた叔父で、週末になるとよく韓国料理を振る舞ってくれたりと、心のよりどころになっていたんです。

ただ叔父は難聴で会話を楽しむのが難しい状況にありました。
そこで、会話を楽しむために数十万円の高価な補聴器を買ったのですが、聞こえ方に満足できず、1週間もしないうちに使うのをやめてしまったんです!

“会話サポートイヤホン”の開発にきっかけになった叔父夫婦

数十万円の補聴器ですよ?
こんなにも高価なのになぜ満足のいく「聞こえ」にならないのかを知りたくて、叔父の補聴器を分解してみました(笑)。
プロダクトデザイナーだった私には、その補聴器の原価は5,000円ほどに見えるのに、実際の販売価格はその100倍ほどです。

大事な家族がその補聴器に期待と信頼を寄せていたからこそ、物づくりをする者として強い憤りを感じたことを覚えています。
叔父の「難聴」という課題に出会い、「大切な家族のために」という今まで見つけられなかった『なぜやるのか』に初めて納得する目的ができたんです。
いつか、補聴器とは異なるアプローチで聞こえのサポートが可能なプロダクトを開発する!という目標ができた瞬間でした。

開発をする上で大変だったことはありましたか?

サムスンのオーディオ担当に「Impossible(不可能)」と言われたことがあります。
最初のアイディアは、Bluetooth機能を搭載した聞こえのサポートデバイスの開発を目指していたのですが、当時は自動で「聞こえ」にあわせて音を調整するイコライジング機能を持つソフトウェアを、独自で開発することは相当な技術が必要だったんです。
今では無事に製品化していますが、当時そのアイディアをもってサムスンのオーディオ担当に相談すると「できるはずがない」と言われてしまいましたね。

「インポッシブル」と言われても諦めなかったから今があるんですよね

そうですね。
「会話サポートイヤホン」は補聴器や集音器の市場にありながらも全くの新ジャンルのプロダクトだったため、だれも正解を知らないという未開の分野です。
だからこそ今までの『頑張ったら結果は必ずついてくる』という経験を信じて、ただトライし続けました。

そこから兵役に従事している2年間は補聴器市場の調査や、ビジネスモデルの設計、プロダクトやソフトウェアの開発仕様を作成することに集中しました。

そして2016年3月から1人で起業する準備を進めたんです。
投資家からの資金調達のためにプレゼンを重ね、補助金の申請、試作機の開発、経理、採用などをほとんど1年間、1人で行っていました。
プロダクトデザインと開発以外は全てが初めてのことだったのでたくさん失敗もしましたし、資金が尽きそうになってヒヤヒヤしたこともありました。
とにかく一つ一つが手探りでした。

様々なことを進めていく中で「このプロダクトなら行ける!」と思ったのはどんなことがきっかけでしたか?

INDIEGOGOによる約1億円の資金調達で開発した会話サポートイヤホンの初代モデルと、次期モデルの試作機

2016年11月にアメリカのクラウドファウンディングサービスINDIEGOGO(インディーゴーゴー)を使い、試作品の先行販売を始めた時のことが印象に残っています。

当時商品はまだ試作機の状態で、私が持っていたのは思いとコンセプトのみ。
それでも初めてのお客様だった一人の男性は、アイディアとそこにある可能性を期待して、購入してくれたんです。
信頼して購入してくれたその人に、とても、とても感謝しましたね。

その後、順調に売り上げも伸びていき、記念すべき1期目の最終日、2016年12月31日のことです。
突然、INDIEGOGOから大量の通知が届き、iphoneが鳴り止まなくなったのです…。
大勢の購入者がサイトに殺到し、私のプロダクトを購入してくれるという奇跡が起きたんです。
その1日でこれまでの累計売り上げを超えるほど。
もう、何がなんだか全くわからず、もちろん嬉しいのですが、本当に信じられない気持ちでした。
もし神様がいるとしたら『人生をかけてこのビジネスを続けなさい』と背中を押してくれているのかと思ったほどです。
それほど予想だにしていない状況でした。

実はその日、INDIEGOGOで話題のプロダクトとして私たちのプロダクト「会話サポートイヤホン」がニュースレターで取り上げられ、それがきっかけで多くの人に見てもらえたようで、プロダクトへの期待を「購入」という形で背中を押してくれようです。

この経験は、それこそ幼少期から発明家に憧れ、物づくりにチャレンジし続けてきたこと全てが報われた瞬間であり、それが確信に変わった瞬間でした。

2019年の販売開始から約30,000台を販売した、会話サポートイヤホン「Olive Smart Ear(オリーブスマートイヤー」(現在は販売終了)

世界を代表するヘルステック企業へ

製品の発売から4年が経過した現在、今後の展望を聞かせてください

従来の補聴器とは異なるアプローチで開発された、私たちのプロダクト「会話サポートイヤホン」は進化をし続け、『価格・デザイン・機能性』の課題を解決しました。
2021年秋から販売している「Olive Smart Ear Plus」の価格は約7万円ほどと、一般的な補聴器と比較すると安価でありながら、見た目はワイヤレス音楽イヤホンのようにスタイリッシュで、スマートフォン1つで簡単に自分にあった聞こえに調整ができるものになっています。

また多くの人に、手軽に聞こえのサポート機器の使用を始めてほしいという想いから、当プロダクトは3ヶ月間のお試しから始める月額利用サービスも導入しています。
補聴器や集音器は毎日身につけるものであるからこそ、紛失や故障による交換費用や修理代に悩むお客様も多いです。
そんな方々に向けて、このように簡単に始められて、安心して使い続けられる月額利用サービスというものを作りました。

現在はありがたいことに世界3ヶ国で累計80,000台以上を販売し、少しずつですが、聞こえの課題を抱える人たちに対して、従来の補聴器へのイメージを変えることができているということに嬉しさを感じています。

ただ、まだまだ始まったばかりです。
今年も新しいモデルの発売を控えていますし、中長期的には「聞こえ」だけに留まらない健康への課題を解決し、世界を代表するヘルステック企業に成長していきたいと考えています。

最後にインタビュアーからひとこと

皆さんこんにちは!
株式会社 OliveUnion マーケティング部の藤田です。

ここまで記事を読んでいただきありがとうございます。
「Oliveな人たち」記念すべき第一弾として、話を伺ったのはCEOのオーウェンでした。

今回は「難聴」という社会課題を解決することを選んだ理由や、不可能と言われたイヤホンを開発するに至った経緯、今後のオリーブユニオンについてなどなど、インタビューをしてきましたが、お楽しみいただけましたでしょうか?

私たちオリーブユニオンは、世界中の難聴の課題を解決すべく、製品開発に日々取り組んでいます。

業界的にはまだまだ新参者の私たちですが、CEOのオーウェン・ソンをはじめとして、世界中からオリーブのミッションに共感したメンバーが集まり、一人でも多くのお客様の生活がより豊かになるよう活動をしています。

オリーブユニオンというブランドを、もっと多くの人に知ってもらい、補聴器・集音器市場を変えていきたい、そんな思いから、オリーブユニオンで働くメンバーの生の声をこの企画を通して伝えていきますので、次回もぜひご覧ください!

クリアな音質・高いデザイン性 | 集音器なら Olive Smart Ear Plus

Olive Smart Ear Plus(オリーブスマートイヤープラス)は、ワイヤレスイヤホンのようなおしゃれなデザインの集音器です。

スマートなデザインながら機能も充実しており、補聴器と同等の集音力を持ちながら、会話を立体的に捉える『3D集音』、雑音を除去する『雑音抑制機能』、不快な音を抑えた『ハウリング抑制機能』など様々な機能が搭載されています。

さらに、スマートフォンの専用アプリと連携させることで、ワンタッチで集音モード切り替えが可能で、自分自身の好みに合わせた調整を行うことが可能です。
集音器製品について>>

オリーブ製品開発の思い

オリーブでは製品開発の中心に「聞こえのスペシャリスト」である言語聴覚士がいます。

オリーブの製品開発の中心を担っている韓国オフィスでは、オリーブセンターという施設を開放しています。
オリーブセンターには言語聴覚士が常駐しており、誰でも製品の使い方や、聞こえに関する悩みを気軽に相談することができます。
また、製品を利用している方々のリアルな意見を聞くことができる場所でもあり、実際の利用者の方々から集まった意見を元に、日々製品のアップデートを行っています。
言語聴覚士について>>

◼︎言語聴覚士 ゴン・ハンオル
・HALLYM UNIVERSITY 聴覚学科卒業
・新生児聴力選別検査修了(韓国聴覚学会)
・韓国聴覚士協会聴覚士資格取得
・耳鳴りプログラム開発参加
・キムスヒアリング補聴器センター センター長

言語聴覚士 ゴン・ハンオル | 聴覚士証明書

株式会社 OliveUnion マーケティング部

藤田 麻里子

Mariko Fujita

東京都出身。新卒でマーケティングコンサル会社に入社。広告事業部にてアカウントストラテジストとして、広告の戦略立案と運用業務に従事。その後2020年にオリーブユニオンに入社し、マーケティング部に所属。より多くのお客様がOliveの製品やサービスを体験し、安心してご利用できるよう、オンラインチャネルの販促やサービスUI/UXの改善業務を担当。

藤田 麻里子

ひととひとカテゴリの人気記事 Ranking in category